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「L字型アームによる90%超スピートセルフ洗車」は、アメリカの新しいトレンドとなりつつある。しかし、伝統的な「大量連続洗車」は、いまだにアメリカの洗車シーンの主流である。
その伝統的な洗車を見ていこう。
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拭き上げは意外に丁寧で、ステップからトランク・ボンネットまで拭いていた。内窓・ダッシュ周り、最初にされるバキュームまで入れると、アメリカの洗車は室内清掃込みが普通らしい。これで1500円ぐらいは安い!
作業が終わったら、「出来ました!」って感じで手を挙げる。車の持ち主が近づいてチェックをする。ほとんどの客が「ここっ、まだ拭いてない。だめっ!」とクレームをつけている。クレームの部分をやり直した上で支払い。正規の値段のチップ」を払う。その仕事が気に入らなければ払わなくても良い。スタッフは、チップが大切な収入源なので、一生懸命やるようだ。
洗車の後で、特別に手掛けワックスを掛けたりシートクリーニングをしてもらうことをディテールと言い、特別な作業である。値段も50ドルから100ドルとなかなか高いのだ。
詳しく店の運営について話を聞かせてくれたグラントさんの店は圧巻だった。高級住宅街の中にあり、いわゆる高級車が多い。ベンツ・BMW・ポルシェ・ジャガー・キャデラック、まるで高級車の見本市のようである。
この店は確実に儲かっている。見学に行ったのが晴れた土曜日であることを割り引いても、ものすごい来客数には圧倒された。この店は半端ではない利益を上げていることは間違いなさそうだ。
洗車のメニューからは平均単価は多分20ドルぐらいだろう。会員割引を行なっているので、それを考えると15ドルぐらいか。彼は具体的な金額は口にしない。しかし、月間来店台数が約一万八千台である事は教えてくれた。勝手に計算してみよう。
・洗車売上げが、15ドル×1万8千台=27万ドル(日本円2,850万円!)
・コーティング・室内クリーニン グなどのディテールが20台、平均単価を60ドルとして、1万8千/20台×60ドル=5万4千ドル(日本円567万円)
・ガソリンの給油が洗車3台の内1台として、1万8千台/3台×山勘で利益5ドル?=27万ドル?(日本円315万円?)
その他の売上を無視してもこの店の売上げは500万円、粗利益では3,200万円以上のものであろうと、勝手に想像した。
高級住宅地の、しかも商売として一等地であろうこの店はゆうに千坪以上の敷地で、オールコンクリート張りのきれいなフィールドに、立派な建物と巨大な機械。これらの投資と償却、リースをむちゃくちゃ乱暴に店舗費として1ヵ月700〜800万かかるとする。 問題は人件費だが、洗車機の中で洗車をしたり、フィールドで仕上げをしていたスタッフの時給は、6.75ドルと聞いた。日本円で約700円/時。作業スタッフは60名と聞いた。
200時間/月×700円×60名+管理者達の給料=900万円/月くらいだろうか。
その他の水道高熱・保険代(訴訟国家のアメリカではこれが大きいはず)で、200〜300万円かかったとしても、会社の運営利益は1ヵ月に1,000万円以上はあるはずだ。これはすごいことで、1年の経常利益が1億円以上ある企業は日本でも数百社に1社と言っていい。それを1軒の洗車屋が出しているとしたら、これはびっくり仰天なのだ。
ここはロサンゼルスでもトップクラスの店であるはずで、どの店でもここまで儲かっているかどうかは解らないが、いずれにしても、ロサンゼルスの洗車屋は非常に儲かるビジネスであることは間違いない。
ここで注目すべきは、200時間/月×700円×60名=740万円という人件費。全体の利益の20%程度でしかない。
働いているのはほとんどがヒスパニックでメキシコ人が多い。メキシコから移住してきた人、あるいは働きに来ている人だ。彼らの給料は安い。物価が高いロサンゼルスでやっていけるのであろうか。もちろん無理である。しかし彼らには「チップ」という収入源がある。これが給料以上の収入源になっているのだ。
チップは、洗車などのサービスに対しては払うべき料金に20%程度を上乗せして払う。洗車の出来栄えが気に入らなければ払わなくてもいいし、10%でもかまわない。何か特別に感謝したいことがあれば30%でもかまわないのだろう。概して20%のチップを客は払う。それは、すべてサービスを提供したスタッフ達のものとなる。彼らは、会社から給料をもらい(給料がゼロの場合もあるという)、直接接した客からもチップという収入を得る。だから、会社は利益の20%程度の給料を払っておけば、それでいいのだ。所得の低い近隣の途上国からの出稼ぎ労働者がいて、彼らの必要額の半分程度を給料として払えば、あとはチップで生活を賄う。それでうまく行っているのである。
アメリカが元祖の大量生産工場のように、ものすごい数の車を、広大な敷地と大量処理の連続洗車機を使って、とんでもない数のスタッフが、洗車と仕上げを処理していく構造は、移民あるいは出稼ぎ労働者という「低所得層」があって、しかも、チップという習慣によって人件費を極端に低く抑えられる仕組みが、大人数のスタッフを動員できることによって「支えられている」と言えるだろう。
「この仕組みは、日本ではなかなか実現できないなぁ〜」
何箇所かの連続洗車場を見て、この仕組みは、日本では無理があるように思えた。
初めて見た米国の洗車市場。低所得者層の大量動員による大量洗車場ばかりかと思ったら、最新鋭の機材を導入した、目を見張る洗車ショップもあった。デザインや発想の異なる機械類もたくさんあった。
それらがそのまま日本で展開でき、使えるわけではない。しかし、洗車の持つ可能性をさらに広げてくれるようなアイディアがいっぱい散らばっていて、大変な刺激になった。
日本の、次の洗車シーンを創り出すエネルギーをもらった。きっと近いうちにまたアメリカに行く。そしてもっとエネルギーをもらい、もっと素晴らしい洗車を提案したいと思う。
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