テストが終わり会議室で陶社長が私に話しかけてきた。
「アイ・タックさんがこのタオルの品質のことで厳しく言ってくれて、ものすごく勉強になった。良いタオルが出来たと思う。私達は、この品質を絶対に守っていきたい。実は、安定した品質を守るために、綿は上海北西の決まった畑で一番良い季節に取れた綿花を、紡績工場にまとめて買い入れてもらうことにした。染色は意外だが、吸水力にものすごく影響するので、染色工場の社長に特別な方法で加工してもらうことにした。その訳は…」。
この段になって、値上げ交渉か?と私は一瞬身を堅くした。が、そんな話しではなかった。陶さん曰く「私達は、今回のタオルのことで関係する工場の社長達と真剣に品質のことを話し合い、今までにはない安定した良いタオルを作ろうと決心した。絶対に良いタオルを作ります。いろいろなリスクを自分達で被ったうえで、良いタオルを作ろうと皆で決心したのです」。
私は、値段交渉かと勘ぐった自分を恥じた。「ありがとうございます」以外の言葉が見つからなかった。
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