Vol.18 >インタビュー特集 |
ガソリンスタンドほど恵まれた商売はない |
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今月は、熊本県で驚異的な収益を誇り、全国的にも有名なアイビー石油さんの馬場社長への、弊社代表谷好通のインタビューを特集してみた。 |
非常識的SS作り |
[谷]こんにちは。今日は宜しくお願いします。まず、最初は、馬場社長がSSを始められた経過から聞かせてください。 [馬場社長]私が高校卒業後SSに就職しまして21才の時に店長をやらせていただきました。その時に非常に大きな目標をたて、スタッフと一緒に苦しみながらやり抜き、達成した時、涙が止まらなくなるほどみんなで感動し喜び合いました。その時の感動が忘れられず、若い時から独立してSSをやることを決意しました。 [谷]突っ込んだ質問ですが、独立の最初の資金などは? [馬場社長]その感動の時からひたすら貯金して、10年で一千数百万貯めていました。でも、当然それでは足りなかったので、父に担保の依頼や借金にも行きましたが、厳格な父にはことごとく断られました。でも後で考えれば、あの時父に厳しくしてもらったことが、今につながっていると思いますが。 しかし、縁あって、そんな私に対し、私自身の「想い」を担保にし、「商売を始めさせよう」というありがたい申し出をある会社からいただき、スタートすることができました。 |
[谷]「想い」を担保にしてくれるなんて、すごいですね。当然それはあなたのそれまでの素晴らしい実績と、熱心さが勝ち得たものだったんでしょうね。それで、スタートは順調だったのでしょうか? [馬場社長]イエイエ、とんでもない。 独立するまでは福岡の400キロSSで店長をさせてもらってましたが、ここは一日に1キロ強がやっとの状態で、あまりもの差があり大変ショックでした。そこで、一日2キロ販売するまで店を閉めないというルールを自分で作ってがんばりました。 夜中の12時くらいに、あと6リッターで2キロになるのに、明け方まで一台もこないなんていうこともあって、そんな時、朝4時くらいに来たお客様に「1000円分!」と言われ涙が出るほど嬉しかったこともありました。あの頃の経験が、「お客様に来て頂くことのありがたさ」を教えてくれたのだと思います。 |
ラクで儲かるガソリンスタンド |
[谷]今、馬場社長のお店は周辺SSとガソリンで約20円格差で高く販売している上に、油外収益も月間350万円以上も上げていますが、ここまでの収益性を誇る要因はどこにあるんでしょうか? [馬場社長]私はガソリンスタンドほど恵まれた商売はないと思います。なぜなら、まず「ガソリンは腐らない」 生鮮食料品などは毎日の仕入れに命がけですが、ガソリンは、鮮度など、まったく気にせず販売できます。「出来たてのパン¥350!」という商品も、翌日には「3個¥100」というのは一般小売業では当たり前です。 次に「商品の回転がとても早い」 しかも現金で回収でき、しかも短期で回転できる商品。他業種になかなかこんな商品はみつかりません。 さらに「流行に左右されない」 |
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一般小売業では売れ筋商品を見つけるために常に血眼です。しかも時期を逸すればあっという間に不良在庫の山です。このようにガソリンスタンドは、非常に恵まれた商品を扱っているのです。きちんとお客様の要望、期待を実現すれば、儲からないわけがないと思うのです。しかし実際の状況は、今のSS業界ではお客さんのほうを見ず、横(同業者)や後ろ(元売り)の事を気にしすぎていると思います。とにかくお客様の方をきちんと見ること、それに尽きると思います。 |
[谷]なるほど!確かにそうですね。 [馬場社長]さらに言えばガソリンスタンドが恵まれていて、甘えを生む最大の要因となるのが「店を開ければお客さんが来てしまう」ことにあります。一般小売業では、ホントにお客さんの数がゼロになってしまうことも十分ありえます。しかしガソリンスタンドはサインポールを掲げ、店を開けさえすればある程度はお客さんが来てしまいます。これが「客はどこにもどれだけでもいる」と、とんでもない勘違いをしてしまう原因です。以前旅行中に立ち寄った混雑中のガソリンスタンドで、お金の受け渡しにチョッともたついていたお客さんがいました。それを待つスタッフに、年長の店員から「なんばしよっと、そん車早よ出さんか!」と怒声が飛びました。お客さんのいる目の前で、こんな叱り方する業種は見たことありません。お客さんに感謝してもらうものを売る。お客さんをとことん大切にする。きれい事に聞こえるかもしれませんが、これしか繁盛店を作る法則は知りません。 |
人づくりに全勢力 | |||
[谷]それを実現するには、CSの意味をスタッフがよく理解することが絶対条件と思うのですが、具体的にはスタッフ教育でどんなことをしていますか? [馬場社長]ウチは2軒しか店がありませんが、2泊3日で泊まり込み研修を行います(笑)そこで、とことん「どうしたらお客さんにもっと喜んでもらえるか」というテーマなどを検討します。答えは常にスタッフが自発的に気づいてくれるまで出しません。気持ちの中、心から沸き上がった目標や志を実現できるようしかけるのが私の仕事です。「やらされる」という心ではスタッフはいい仕事ができません。(馬場社長はこのことだけで1時間以上話をしてくれた。そして、その研修で使う手作りの資料も見せてくれた。しかしこれは、実際に“見ないと”解からない部分なので、簡略な言葉に換えさせていただいた) [谷]ほかにはどんな教育をしていますか? [馬場社長]2店の間で店長を一日づつ交代させたりします。こうすることで慣れてしまった自分の店に対する目線がリセットされるので、お互いの創意工夫や、見逃していた汚れなどを見つけることができます。アルバイトの子もたまに別の店に応援に行かせるとすごい効果を発揮します。いいところを見せようと、すごい動きで店中かき回してくれるんですよ。店の空気があっという間に新鮮になります。 [谷]ほう、おもしろいですね。でも違う店へ行くと不慣れなので動きづらいのではないですか? [馬場社長]いえ、うちは立地環境が全くちがう店ですが、ガソリン価格も洗車価格も、全て同じ金額、一番大切な接客もまったく同じ流れで行っています。だからまごまごすることなく迷わず働けるのです。あれはこう、これはコッチと複雑化したらだめです。価格までウチはクレジットでも現金でも同じです。 |
労働分配率100%の洗車?からの脱却 | |||
[谷]さて、洗車のことですが、どのように行っていますか? [馬場社長]2年ほど前から、ガラッと洗車の仕組みを変えました。2年前、刈谷快洗隊に所長たちに一緒に行って、泊りがけで勉強をさせてもらい目からウロコが取れました。私たちのSSに対する考え方と、快洗隊の洗車に対する考え方が驚くほ ど似ていて、それからずっと、ほとんど快洗隊をマネしています(笑)それまでは、オープンからずーーっと「外洗車と室内清掃1500円」の洗車が主力で、チケットをバンバン売ってました。だけどいくらやっても儲からない。ある日、洗車に対する人件費を計算して見ました。求人費からユニフォーム、福利厚生まで「人」にかかるもの全てを計算したら、なんと[労働分配率100%]ということに気づきました(笑)これでは儲かるどころではありません。 |
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そんな時、谷社長のお話を聴き、実際に快洗隊を見て[手洗い洗車1800円、室内清掃だけでも1500円]などという高価格設定に非常に驚きました。しかし、よく考えるとそれが適正価格なんだということに気が付き、その値段で売れる質の洗車をやればいいんだ、その値段で洗車を売れる店になればいいんだと発想を切り替えました。メニューとか待合室も、しっかり快洗隊からのパクリです。(笑)(事実、快洗隊そっくりのメニューがあり、快洗隊と同じ喫煙ブースまでが待合室に設置されていました。)そこからコツコツやって、今では平常月でもキーパー180台〜200台くらいまできました。宣伝するわけではありませんが、私もスタッフもキーパーには本当に惚れ込んでいます。私たちが惚れ込んでいるので、お客さんもキーパーに惚れています。高額の商品が売れるかどうかは、その商品に売る側、つまりスタッフが本当に惚れているかどうかだと思います。今後のテーマはもうワンランク上の商品、クリスタルシールドなどがきちんと売れていく商品にしていくことです。谷社長、年明けに研修お願いしますね! |
セルフのとらえ方 | ||
[谷]わかりました。また、バッチリやりましょう。こちらのキーパーの実績は私どもの快洗隊に匹敵するもので、すばらしいものです。次に今押し寄せているセルフ化の波はどうお考えですか? [馬場社長]これは「給油所=セルフをやるのか、サービスステーション=フルサービスをやるのか」二者択一をするチャンスだと思います。給油所であれば人の問題で悩むことはなくなりますし、サービスステーションは人を活かして商いができます。またセルフかフルかという論議はどちらがいいということはありません。ただ、今のセルフはお客さん主体の販売形態だからウケているし、サービスに難点があるSSは小売業として成立しえないことがあるというだけです。ウチは当然フルサービスでやっていきますが、商品は「人」です。「人」の育成に全力で力を注ぎます。 |
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マニュアルとサービスは違う | ||
[谷]もう少し詳しく教えてください。重要なことですよね。 [馬場社長]人の育成で、注意すべき点は「マニュアルとサービスは違う」ということです。マニュアルでできることは、サービスの基になる作業の最低限の均一化です。サービスはお客さんに喜んでもらってはじめてサービスと呼べる物になります。例えば窓を拭いたり車を洗うだけの洗車なら、それは単なる作業です。それをキレイに窓を拭く。キレイに、しかも早く洗車するということが出来て、初めてサービスとなるわけです。マニュアルで出来ることというのは、複数の人間が同時に作業を学んだり、素人が短時間で作業を覚えたり、誰がやっても同じ結果がでるようにできということです。しかし、そこには「喜んでもらいたい」と願う気持ちまでは込められていません。「サービスステーション」をやるならば、本当の意味でのサービスを提供できるかどうかに繁忙がかかっています。「どんな商品を揃えるか」ではなく「どんな |
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サービスの質を提供するか」が問われると思います。スタッフ一人一人の自覚が必要な訳です。 [谷]なるほど、確かにそうですね。 |
リンゴの実… |
[馬場社長]そのためには目先の数字にとらわれすぎては絶対ダメです。たとえ話ですが、10個実がなるリンゴの木があれば、それが成果だとします。その実(成果)を収穫する事ばかり考え「去年10個なら今年は12個」と結果偏重主義で考えがちです。そんなことを繰り返すと、まず土壌がだめになってしまいます。大切なのはそのリンゴが植えてある土の育成なのです。土を良くすることを辛抱強く頑張れば必ず、14,18個と自然に結果が増えていきます。 [谷]おもしろい例えですね。 |
お客さんもスタッフも満足できる店づくり | |
[馬場社長]今まで述べてきたことは、スタッフに満足して貰う職場にすることにもつながります。満足というのは満ち足りると書きますが、これは入れるべき器(目標)がはっきりしていて、それを達成できると満足なんですね。一方器が存在しないと、いつまでたっても「満タン」にならないので、ずーーっと不満なんですね。みんなでサービスとはなんだ?お客さんが喜んでくれることは何?といつも取り組み、目標を定めて進めば結果は必ず良くなるはずです。会社は、お客さんとスタッフが両方とも喜びと満足を味わえるようにできるとグングン前向きに転がっていくと思んですよ。逆に安易にセルフ化したり、ガソリンで儲からないから油外収益をあげようとしても、根本的にサービスの質がともなわないと解決にはなりません。 [谷]ん〜〜、話しが尽きませんが、またぜひ登場してください。今日はありがとうございました。 |
取材を終えて |
1時間の対談予定が大幅に延びて3時間あまりになってしまいました。ほとんど馬場社長の独壇場でしたが、熱い想いをいつもスタッフに語り続ける姿勢には胸を打たれました。熊本県でもやや郊外に位置する同店では求人しても数ヶ月に一度くらいしか応募が無いそうです。採用率100%の中でスキルの高い人材育成が実現できるのは、やはり彼の情熱と深い愛情があってこそだと感じたのでした。 |