Vol.16>眠れる洗車市場を開拓

 

洗車は新しい文化になりうるか

床屋・美容室が持っているマーケットスケール
1世帯あたり1ヶ月間の
理美容サービス
への支出   単位(円)
  

全国

2,819
(2,812)

北海道 3,154
青森 2,012
岩手 2,669
宮城 3,010
秋田 2,670
山形 2,571
福島 3,043
茨城 2,738
栃木 2,960
群馬 3,721
埼玉 2,795
千葉 2,702
東京 3,098
神奈川 2,999
新潟 2,947
富山 3,600
石川 3,880
福井 2,974
山梨 4,337
長野 3,003
岐阜 3,137
静岡 2,997
愛知 3,037
三重 2,912
滋賀 2,648
京都 2,828
大阪 2,720
兵庫 2,720
奈良 3,062
和歌山 2,698
鳥取 2,602
島根 2,714
岡山 2,272
広島 3,888
山口 3,069
徳島 2,548
香川 3,075
愛媛 2,880
高知 2,802
福岡 2,946
佐賀 2,652
長崎 2,197
熊本 2,672
大分 3,171
宮崎 2,348
鹿児島 1,986
沖縄 1,202
信頼すべきグリットの情報?によると、一世帯あたりの【理容・美容サービスへの支出額=2,819円也】だという。そして全国4600万世帯をかけると、2,819円×46,000,000世帯≒1288億円/月年間マーケットスケール≒1兆5千450億円。
かなりのビックマーケットである。しかし、全国に34万軒の床屋と美容室があるのだから、1軒あたりの収入は、わずか378,000円/月。1つの事業の収入としてはいかにも少ない。そこで思わず“下衆の勘ぐり”で「ホントかなぁ」。床屋さんと美容室はそのほとんどが個人事業で、白色申告か青色申告。実際の所得は、この倍はあるような気がしてならない。ひょっとすると、実際のマーケットスケール、3兆円/年ぐらいはあるのでは。(全く根拠の無い勘ぐりでしかないが)
ちなみに、理容・美容サービスに対する支出は
一位:広島県=3888円、二位:石川県=3880円、三位:富山県=3600円
中国地方、北陸地方の皆さんチャンスです。
ガソリンスタンドにおける、洗車のマーケットスケール
大雑把に、1SSの洗車売り上げは30万円/月程度と、業界では言われている。
そして、全国のSS数が現在約4万数千軒。実際には約4万軒と言われている。
300,000円×40,000SS≒120億円/月
年間マーケットスケール≒1千560億円
SSにおける洗車は、床屋・美容サービスのわずか10分の1、あるいは20分の1
1世帯当たり、たった260円/月。 
たった260円・・・信じられないほど小さなマーケットである。
なぜなら、たばこ:1,143円、衣類:16,585円、医療費:10,859円、そして自動車関係:22,639円/月が一世帯あたりの月の支出である。(グリット資料より)
衣類に16,585円に対して、理容・美容が2,819円
自動車に22,639円に対して、SS洗車は260円。
これは絶対に少なすぎる。何か変だ。
ユーザーが“買う洗車”は、従来、ほぼSS洗車だけであった。サービス業としての洗車マーケットは、あまりにも未開発
理容・美容マーケットのスケールに比べて、現状の洗車のマーケットはあまりにも小さすぎる。何故か。
車のユーザーは自分の車をキレイにしようと思ったら、「自分の家かコイン洗車場などで、自分で(または誰かに)洗い、磨く。」それとも「ガソリンスタンドで洗ってもらう。」
この2つの選択肢しかなかった。
そしてそのガソリンスタンドには、ガソリンの販売に都合の良い洗車、つまり“スタンド洗車”があるだけで、選択の余地は狭いものであった。スタンド洗車に対するユーザーの支持率は、アンケートに拠ればわずかに17%に過ぎず、決して多くの支持を得ている訳ではない。多くのユーザーの欲求に合っていない洗車しか売っていないガソリンスタンド、しかも洗車サービスを販売しているのは、ほぼガソリンスタンドだけであり、大多数のユーザーはそれを受けようとはしていない。
「買う気があっても、欲しい物を売っているところが無い。」というような状態であろう。
ユーザーが欲しい洗車、それが快洗隊にあった
私達は、ユーザーの洗車に対する欲求を、既成概念にとらわれず追求してみたら、そこに大きなマーケットを見つけた。「自分が洗うより、磨くより、もっと上手にやってくれる所があれば、多少お金を多く払ってもやってもらいたい」。そんな客層が意外に大きく、それを満たしてくれる店が無いことに驚いた。
そのマーケットにターゲットを合わせて作られたのが「実験店・快洗隊」。この店はまだ未開発の洗車マーケットが存在し、店作り次第では大きな需要を引き出すことを実証した。
その快洗隊が、新たに“快洗Boss”を手に入れ、「15分手洗い極上洗車」を世に出した時、平均予測400万円/月のビジネスを作り出すことに成功した。
しかも、周辺SSの洗車売り上げには影響しなかった。つまり、快洗隊は全く別の洗車客層を掘り起こしていたのだ。
快洗隊をオープンしてから半年くらいたったことであろうか、刈谷快洗隊において、驚異的な洗車売り上げを出しているので、さぞや周辺のSSでは、洗車売り上げについてご迷惑をかけているのでは、と思ってお聞きして回ったことがある。
答えは「いや〜全く影響ないよ。売り上げもぜんぜん減っていないし。客が違うんじゃない?」予測もしなかった答えに戸惑いを感じつつも、SS洗車とは全く違う種類の洗車需要を掘り起こしたのだ、という事実に、改めて驚いた記憶がある。
いまだ未開発の洗車客層の、巨大なマーケット。
誤解を恐れず、大変乱暴、かつ無茶な計算をしてみる。
※自分の外見に対する1所帯/月当たりの出費
理容・美容が2,819円/衣類に16,585円≒16.99%
※自動車に対する1所帯/月当たりの出費
SS洗車は260円/自動車に22,639円≒1.15%
このような単純な計算は、的外れで比較にならないかもしれないが、それにしても理容・美容に対する出費は、SS洗車に対する出費の14.77倍。
従来のSS洗車とは一線を画した、新しい洗車商品を提供する「洗車屋」の出現によって、せめて、SS洗車も含む全体として理容・美容の出費の1/3の需要になったとすると、年間5千億円のマーケットになるはず。
SS洗車のマーケットスケールが、現状、約1千5億円とするならば、あと3千5百億円が未開発の需要として残っている。とするならば、たとえば、洗車屋が全国に10,000軒出現したとしても、1件当たり350万円の洗車売り上げが見込める。

もう一つのムチャクチャな仮説
※刈谷快洗隊の存在する愛知県刈谷市は人口13万人。刈谷快洗隊に訪れるユーザーの85%が、半径2.5km以内の地域から来店している。そう考えると、隣接して存在しても有効な商圏は、半径2km程度か。面積で12.56平方km。刈谷市の面積が50.45平方km。とすると、刈谷市には、4件の快洗隊が限界か。
刈谷市の世帯数が47,442軒。全国の世帯数の約1,000分の1
とすれば、全国に快洗隊は4,000軒存在することが出来る。刈谷快洗隊一ヶ月平均の洗車売り上げが400万円であるから
400万円×4,000軒×12ヶ月≒1,920億円の新しい洗車マーケットが出現する。

いずれも精度の全く高くない試算ではあるが、そのマーケットスケールは巨大であり、十分に一つの文化を形成するだけのスケールはある。
そこにマーケットが存在すれば、一つの業種が必ず出現する
この不景気な世の中、企業はバブルの頃までのように安穏としていてはたちまち消滅してしまう。また、今までどおりの業種に閉じこもっていても同様だ。「何でもあり」であり、商売になることがあれば、今までの業態がどうであろうと、全くこだわらず進出しようとする。
SS洗車とは異質の洗車サービス業(コーティングサービスを含む)に、大きなマーケットが潜んでいることに、色々な業種の方達が気付き始めており、その動きをひしひしと肌に感じている。

独立型の洗車屋ならば、100坪規模の専門店
あるいは、300坪規模のトータルサービスショップ
「洗車屋」が一つの業種として成り立っていくことは間違いないことであろう。では、どんな形態で広がっていくのであろうか。
単純に考えれば、単独の専門店舗であって、刈谷快洗隊のような形態が一番分かりやすい。どこから見ても洗車専門店であり、前面道路から店内で車を洗い磨いている様子が手に取るように分かる店が理想的である。誰が見ても、その店に入っていけば、自分の車に対してどんなサービスが受けられるのか、つまり商品が一目瞭然になっていることが、ユーザーに訴求力を持つ店舗といえる。
刈谷快洗隊に来店したユーザーに対するアンケートで、「来店動機」を尋ねたところ、「店の前を通りがかって」という回答が、全体の55%を占めていたことを考えると、その意味でも、独立店舗が望ましい。
前面道路側が20mの間口、奥行き15〜6m、約100坪程度の敷地が、一つの理想と考えている。現在の刈谷快洗隊の敷地は奥行きが深い188坪である。その洗車売り上げが平均400万円程度。これがもっと奥行きの浅い100坪程度の敷地であっても、200〜300万円ぐらいの洗車売り上げが可能と、経験上判断しているのだ。そして、この100坪程度の土地というものが、他の商売には狭すぎて、物件としてかなり残っていることも、これからの急速な普及を考える上で重要な要素といえる。

あるいは、いっそのこと300坪以上の店舗も意味がある。洗車、コーティングなどだけではなく、オイル交換、タイヤ販売、そしてペイントリペアなど車のメンテナンスすべてをカバーするショップは、洗車の集客力を活かして、非常に活発な店舗を作り上げることが出来るであろう。
このタイプも、ビジネスとして大変魅力的な可能性を持っている。
集客力を利したSS併設型も、有望である。
私達は、かつて普通のSSに快洗隊の看板を上げ、スタッフに訓練を通じて技術をつけてもらい、新しい洗車メニューを作り、刈谷快洗隊でやってきた販促を打って、「快洗隊チェーン店」を展開してきた。しかし、前号のKeePreタイムス15号において延べてきたように、“限界”があった。もちろん、快洗隊導入前に比較すれば飛躍的な収益アップは実現できていたが、刈谷快洗隊に匹敵するようなチェーン店は、結局作り得なかった。
それは、SSに快洗隊の看板を上げても、一般ユーザーから見ると「快洗隊という名前の看板を上げたSS」であったことも大きな障害の一つで、「洗車屋」を表現し、そこには今までのスタンド洗車ではなく、新しい洗車ニーズに答えられる上質な洗車があることを、なかなか訴求できなかった。
だから、単独店である刈谷快洗隊の売り上げに追いついて来られなかったとも言える。しかし、元々SSが持っている集客力はずば抜けたものがあり、その集客力を利した形での「併設型、洗車専門店快洗隊」を作ることも、十分に可能であり、有望である。